中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
リサイクル ②


つづき

前回はかつての村落生活は牛糞を燃料として用いていたことを紹介した。

現在はというと、盆地に住んでいる人びとは山に行って適当な薪を拾ってくる。
昔と違って、人口が増加し、薪を使う生活スタイルが定着したので、木を切り倒して薪用に乾燥させて、それを安価で提供する人もいる。

また、ここ数年は各家庭で肥溜めを作り、メタンガスを用いて調理などする家が増えてきた。
各家庭にトイレはなかったが、このメタンガス発生用の肥溜めを政府が推奨するのでトイレが作られるようになった。
また、家畜の排泄物が主なガスの発生源になるので、掃除した家畜の糞などが村の排水溝に流れ出ないようになった。
あたりまえのように、近年は子供たちは学校教育を受けるため、家庭の野良仕事や家事に従事することが少なくなり、牛糞を拾う作業をする若者がいなくなった。

田畑の耕作もハンドトラクターを使用するようになれば、もう家庭で牛を養う必要はない。

若者が家にいないから、サトウキビを収穫したあとの葉っぱや、稲わらをえさとして与えたりする手間隙がとれなくなっている。

だから今、村落の日常風景からは水牛の姿が消えようとしている。

かつて朝や夕方にあちこちから聴こえていた鈴の音が聴こえなくなってきている。

水牛の首にぶら下げられていた木製や竹製の鈴。
木材の柔らかく、温かみのあるカランコロンという音は、金属で作った鈴よりも聴いていて心地よい。


村の生活は牛たちからいろんな恩恵を受けてきた。

牛の角は薬になったり、建築用の道具や胡弓のような楽器にもなる。
牛の皮は様々な太鼓の面や紐になったりする。
牛の血と肉は神様の供儀として、見えない、ものものしいものの怒りを静め、庇護を請うことが出来た。
なにより、食料となって人間の生命の源になった。


「サー・ペェ」という料理がある。

サーはサラダ、生ものの料理を意味し、ペェは牛の腸の辺りの名称である。
タイ族料理のなかで大変有名な料理だ。
見た目は黒い墨のような汁のなかに、ミンチ状の柔らかい黒緑の物体がある。
これを塩や唐辛子で味を調え、火を通した牛肉の内臓や赤身などと、細い米線とあえて食べる。


こんな逸話がある。

外地からきた漢族がタイ族の家でサーペェをご馳走になった。
その料理を最初に口に入れた味は苦い、でもその苦味にはほのかな甘味があり、香ばしく優しい匂いがする。
たべればたべるほど、おいしいと感じる。
その漢族はえらく気に入って家の主人にたずねた。

「この料理は何で出来ているのですか?」

家の主人は片言の漢語でこういった。
「それは牛が(外に)出す前の『うん○』です。」

がーん!
その漢族はそれを聞いてビックリ。その場で失神してしまいました。

とさ。


説明しよう。

「それは牛が(外に)出す前の『うん○』です」
というのはある意味、正しい。

牛は草を食べる。
この料理が一番美味しい季節は、牛が春先に柔らかい草を食べる頃だ。

牛は草をじっくり反芻して胃の中に入れる。

その草は消化されながら腸を通って最終的には排泄される。

・・・そう、サーペェとは、

牛の腸で消化吸収されている途中の、排泄される前の草のことだ。

きちんとどこら辺の腸に残っている草を食べるかも決まっている。
一応、安全な料理だ。

僕も季節になるとこの料理を食べた。
今はどのレストランでも季節に関係なく提供してくれるが、やはり新芽がでてきた春ごろが一番おいしい。

牛の一生、生まれて屠殺されるまでの一生と、人間の生活とのつながりを考えた。
僕らはいろんな方法を用いて「異質なもの」を身体のなかに取り込み、人間の血と肉に変換する。

牛を屠殺する。
そして牛を解剖する。
くまなく、綺麗に、美しく。

そしてその皮や骨や角や血や肉を皆で分かちあう。

すべてがばらばらになる。

すべてがカケラになる。


もとをたどれば、この世界に生きているものたち、存在するものは、すべてがばらばらだ。

人間はそれをつなげ合わせる技術と知恵を持っている。

食べることも生きることも、

人間の身体は、ばらばらのものたちを結集してつくられている。
いや、ばらばらのものたちが、結集してくれたから生きている。


もういちど、自分の身体の中にある自然と、息する物たちとのつながりを、感じることから始めよう。


僕が口や鼻から出す「息」、笛を奏でる「息」は、そんな自然との循環のなかに、生まれては消えていく。

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