中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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ある銀職人の絶望


今回の旅のおわりに、僕は町の銀職人の家を訪ねた。ワン母から紹介されてから、たまに顔を出して仕事をみせてもらっていた。

文革が終了してから町には銀細工を扱う工場がつくられた。かつては家で代々受け継がれてきた技を持つ職人が集まって作品を生産している。
やがてその工場を退職した老人たちは、自分の家に炉を作って細々と銀細工を作り、五日に一度たつ市で販売するようになった。

僕は女性が用いていた古いタイプのボタンを探していた。
残念ながら、どの職人も忙しく、依頼を受けてくれなかった。その理由はただ忙しいというだけではなかった。
技術が伝承されていないからだった。



IMG_4007.jpg
写真ではわからないが、腕輪は銀のねじでとめられていて、開閉することができるように工夫されている。
重さは2つで500グラムと重量感がある。
かつては裕福な家が購入した特別なもの。
銀の腕輪にはいくつかの種類がある。


歳をとると眼がよく見えなくなり、細かい細工を施す作品をつくることが億劫になる。細かい作品は跡継ぎの息子に任せるのが普通だが、最近は商売にならないからと技術を継承する若者はいなくなってしまった。
また、なかには「流行らないから」といって古い型の作品をつくらず、新しいものだけ制作する。

そのせいか、多くの職人は他の商売敵と競争するために流行りの作品しかつくらない。
「あんなものは誰も買わないでしょう。めんどくさい」
ある職人の家のおばさんが言った。

「このようすだと、古くなった銀細工をだれかが売りに来るのを待つしかないな」と、老人はあきらめて僕を諭す。
(銀は別の作品と交換したり、新しく作り直すことが多い)

老人とおばさんは最近の銀の高騰に頭を悩ませていた。
銀はビルマの職人が持ってくる。本物かどうか、それを知る術はなく、あるのは信頼関係だけだ。
しかし、銀は高騰しており、このままだとその値段を庶民が受け入れてくれないだろうと心配していた。

諺には、銀職人の家は金持ちだ、とある。作品を作る過程で不純物を混ぜたり、余った銀をためたり、それは他の人にはわからないからだ。
しかし、現状は悲観的だ。
この地域の庶民と職人の関係は、我々の市場経済の原理と照らすとちょっと違っている。
銀の値段はその日の値段ではなく、職人が買いだめしておいた時期の値段を据え置いている。
だから、一年前に買いだめしておいた銀は安いが、それがなくなってしまうと、割高になった現在の銀を買わなければならない。

「店じまいもそろそろだね」
そんな話をしている…。


老人の家で、僕はいくつかの作品を見せてもらい、古い型の作品を買うことにした。
僕は前から気になっていた銀の腕輪を手に取り、譲ってもらった。
銀の値段は一年前の基準だった。

僕はふと、息子達には技術を教えないのかきいた。
老人には五人の息子がいて、そのうちの末っ子が技術を継承し、とても美しい作品をつくったという。
僕が譲ってもらった腕輪も、5,6年前にその息子がつくったものだった。

「息子には期待していたが、クスリに溺れて、エイズで死んでしまったよ」

老人はあっさりと僕に告げた。

「アァー、どうしようもないことさー」

老人は大きな金槌をふるって銀を叩く。
炉から伝わるふいごの音、炭の熱気、金属の鈍い音、地面に伝わる振動が僕のこころを揺さぶる。

絶望を受入れた老人は、それでも一人で銀を叩く。



コメント
うちの会社も古いものを作っているけど、
技術を継ぐか?と言われると

「No」やね。
現実問題、生活ができない…
 
 
2011/05/11(水) 22:18 | URL | 日誌~ #-[ 編集]
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