中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
妖術のにおい ①

かなり昔から、タイ族社会の「おばけ」には、人を呪う生霊がいると噂されていた。そのような生霊は漢人たちから「皮琶鬼」とか呼ばれていた。「皮琶鬼」とはタイ族語で言う「ピー・プー」のことだ。昔から雲南の徳宏や西双版納など亜熱帯地域は山に囲まれ、豊かな森や動物があり、朝には晴れることのない霧がたちこめ、そして毒や得体の知れない物の怪が棲む地域と考えられていた。数々の妖術や、妖術を帯びた蟲が存在しているとまことしやかに語られていた。そして、特に生霊の噂は中国建国まで語られていた。


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写真:家のカミにささげられた供物。
  3つの鉢は3人の独立した息子たちの家の守護霊にささげられる。
「ピー・プー」は、特に女性が多いという。さまざまな説明があるが、一般的に言われているのが、「ピー」という精霊が生者に憑いており、生者の意志にかかわらず村落の人びとに具体的な危害や霊的な攻撃を加えるという。そのため、ある女性がピープーだと判断されると、その人はたちまち村八分にされ、最後には村を追い出されたり、ひどい時には焼き殺されてしまう。また、ピー・プーは大抵血統で継承されるとされ、ほとんどの場合、一家は流浪の生活を強いられてしまう。


タイ族の若者の間では自由恋愛は許されていたが、家同士が取り決めることも多々あった。特に、若い二人が恋愛を通じて結婚の意志を固めると、家族は相手の家柄について探りをいれる。その理由のひとつに、ピープーがある。もしも相手の家がピープーの家系であれば、子どもの将来はかならず不幸な結末となることが目に見えている。ピープーの家の子どもは、ピープーの家の子どもとしか結婚する可能性がなかった。


中国の漢語の史書や近代の日記や小説にもよくこのピープーの話が語られていた。なにかの災害が起こると、人々はそれをいつしかピープーのせいだと考え、村の中でピープー探しが行われる。みかねた人民解放軍は、ピープーを「迷信」とし、ピープー探しを差別行為として取り締まる。「科学の時代にピーはいないのだ」と宣伝したのだった。ピープー信仰の撲滅の一環として、映画まで製作される。西双版納タイ族村落を舞台とした『タイ族の医者』(中国語原題「摩雅傣」1960年 上海海燕電影製片厰) こちらで視聴できるYouKu。政府の努力の甲斐もあってか、封建時代の迷信としてのピープーは、そのほかの多くの精霊たちとともに表舞台から姿を消していった…。


つづく
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