中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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シャマンの「うた」 ― ある少年のささやかな希望



2009年2月のとある牛の日。冬。
僕のノートにはその日の魂をあの世に送り出す儀礼のことが詳細に書かれている。

シャマンがある家にやって来て、1週間前に亡くなった死者の霊をあの世に送り届ける儀礼があった。

シャマンは午後15時半ごろから「うた」をうたい始め、儀礼が終わったのは深夜2時半すぎだった。
それまでの間、一度夕食を簡単に食べた以外には、シャマンはずっと座って「うた」をうたい続けた。

シャマンは守護霊を憑依させて、あたかも生中継のラジオのように、あたかも一人のナレーターが何役もの登場人物をこなすラジオドラマのように、死者の旅の様子を「うた」で実況中継した。

ふと目についた箇所を抜粋してここに載せよう。


IMG_3883.jpg

――祖先の霊たちが家に集まり、死者を囲んで共食する。盛大な饗応を受けている――

・・・、
・・・。

<シャマンの守護霊>
モーラーイは止まらない、

見てごらんよく見てごらん、
(目を凝らして)見て眺めてみなさい、

どこかの若い男の子がこちらを眺めていますよ、
とても若い男の子が見ていますよ、

私たちの祖先に言いなさい、
私たちの祖先の霊たちが、大声で貶しています(来るなと貶している)

そこで隠れている男の子は死んであの世に来た、若い男の子
若い男の子がこちらを眺めています


<少年>
ボクの老女(一週間前に亡くなった人)の食事の席を見て、眺めています、
ボクはずっと眺めているだけです、

ボクのおばあさんの食事を、ただながめているだけです、

命の短かったボクは(ここ)来ましたが、祖先たちが貶して言います
祖先の霊たちがほんとに大声で貶しています

命の短いボクなんか見たくないといっています、

ボクの祖母よ、バナナを二つちぎってくれませんか、
それと白い卵を、ピーリェットマイ(日差しが熱い霊)の祖母(死者のこと)は、ボクにくださいました。

ボクのメーウー(おばさん)よ、(ボクは)ただ賑やかな様子を(見ているだけ)です
ボクのメーラーン(おばさん)、デーラーン(おじさん)よ、もうボクを忘れてしまったのですか?

短い命のボクは、あの世に来てしまった、無知のボクの命
悲しいかな、(ボクのことなんて)もうすっかり忘れてしまったのでしょう

・・・
悲しいかな、ボクの祖母はバナナを二つつまんで渡してくれました

<守護霊>
祖先は、孫をじっと見つめています、私の孫よ
祖霊の霊たちは大声で怒鳴ります
ヤーラーン(死者)よ、引っ張って(こっそり取って)渡してはいけないよ

<少年>
ボクたちの(老・中・若)三世代の霊は、大声で怒鳴ります
先祖の祖先は大声で怒鳴り、馬鹿が来たと
老爷(おじさん)たち、短い命のボクを思い出してくれるでしょうか (お父さんお母さんはボクを覚えているかな)

ボクのメーローワーン(おばさん)たち、覚えていますか?
悲しいかな、ボクは死んでしまった、何時になったら人間に生まれ変わるだろうか

ボクは時々(思うのです)ボクのお母さんの孫に生まれ変わり、(再びその腕に)抱かれて揺られたいと。

ボクの母の子孫の孫に生まれ変わらないと、抱いてもらえない

何時になったらどこかの家の孫として生まれ変わり、長い命を生きられるのだろうか

広い土地(人間界)に生まれ落ちて、
長い人生を生きられるのでしょうか、老爷(おじさん)、メーロー(おばさん)よ、

寿命を終えることなく(死んでしまうこと)はとても残念なことです、お母さん、お父さん。

若い少年として(死んだこと)はとても残念なことです、どうして忘れてしまうの?

死んであの世に来て、まるで下界で鶏の喉を切るように(簡単に、あっという間に死んだ)
死んでこちらに来て、まるで鶏の喉を切るようでした。

人間になるには(どうしたらいいの?)、
あの世のボクはどうしたら降りて行けるのでしょうか

悲しいから、伝えます。

ボクのお父さんお母さん、憂いを背負ってもうたくさんでしょう。
悲しみを背負って、狂ってしまいそうでしょう。

ボクは伝えたい、抱いて欲しいと(ボクも老いたお父さんとお母さんを世話したい)
もしもお父さんお母さんが年老いていけば、とても大変でしょう

もしも(ボクが)人間になれたら、(お父さんとお母さんは)ボクに頼れるでしょう
ボクはおりこうにしていますよ、みなさん

かなしいかな、どうやって忘れられるのだろう
死んであの世で暮らすボクは、どうしたら下界に行って暮らせるだろうか

かなしいかな、ムン(国)の災難にあってしまったために、
ムンの災難にあった(あなたの)愛しい子は、ずっと思い耽っている

心をかき乱す心を打ち鳴らす、ちっとも疲れない (?死因について語っているが分からない)

食事の席にあるバナナ(芭蕉)をください、おばあさん
お母さんは悲しみながら生活している、(あるいは過去のこととして「生活していた」)

(お母さんお父さんが)どこの広い大地を行っても、同じ世代の誰に出会っても、適当に楽しく過ごせますように
友人たちと一緒にいれば安心でしょう

大きくなって、高くなってから(死んだら)、おかあさんは(ボクに)頼れたのに、

小さな子どもが大きくなって、公公(儀礼に参加している人たちより先に死んでいるから、少年は自分を「おじいさん」と喩えている)は勉強し始めた頃に死んでしまった

あなたは(お母さんよ)喉を鳴らして悲しんで泣かないでください


持ってきてください、
ヤーザオ(死者)よ、こっそりつまんで持って来ないで、ボクは二つほしい (一つではなく二つ欲しいという言い方らしい)
ヤーラーン(死者)よ、こそこそと盗んで、ボクに差し出してくれれば、ボクは出て行きます。

<守護霊>
「サーイコーヤーラーン(死者)よ、ピーの世界に持っていきなさい
もって行け、供物を持っていく、ヤーリェットマイ(少年の霊)よ、

<死者(老女)>
悲しいかな、伝えます、

おまえが(次に生まれ変わるなら)私のように老いるまでいられるでしょう
おまえは(生まれ変わる)広い大地に、おまえに私と同じような長い寿命でしょう

ヤーラーン(私)はおまえに大切な言葉を伝えます、おぼえておきなさい

私の子孫よ、おまえはザオパーンガーン(「閻魔大王」のような命を審判する神)に挨拶しに行きなさい、それまでは(人間界に)降りてきてはいけないよ

おまえはパーンガーン様に挨拶しに行かなければならないよ、寿命を長く頼まなければいけませんよ
おまえはザオパーンガーンにお願いしに行きなさい、おまえの寿命を長くするように、それから降りてきなさい


よく覚えておきなさい、覚えられるでしょう、老女の孫よ

悲しむだけでは、ヤーラーン(私)は憂いてしまいます
おまえのヤーラーン、メーラーン(おばさん)も、憂い悲しみます、

ヤーザオ(私)が言った宝の言葉を、しっかり覚えしたか?
老女の霊は言いつけます、きちんと覚えましたか?

もしも、(次の新しい)人の一生に生まれ変わっても、すぐに死んでしまうようなら、おまえはそのまま人間界に来てはいけないよ


<守護霊>
おまえは、喉を鳴らして泣いてはいけないよ、モーザオ(死者)に向かって。
おまえはそんなに泣きながら言いたいことがあって来たんだね、モームン(守護霊)に。

モーラーイヤーリェンムン(守護霊)は伝えます、
モーザオ(守護霊)は伝えます。

食事を食べてから、苦しみ泣いてはいけません、
ご飯を食べなさい、喉を鳴らしてはいけない(泣いてはいけない)。

モーラーイヤーリェンムンは・・・
よく覚えておきなさい、そしてきちんと覚えなさい…。



―儀礼に居合わせた人びとは涙を流して聴いていた。
 この少年が誰なのかははっきりしない。
 ただわかるのは、一昔前は医療も発達していなくて、小さな子どもがよく死んだというから、年配の女性たちには子どもの一人二人を失った経験があるということだ…。
 
 悲しみや心の痛みは、分かち合うことができる。

 それが記憶そのものの共有ではなくても、
 人は共に悲しみ、共に涙することができる。―






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