中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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シャマンと対決する 3

兄者を訪ねたあと、僕とワン母は車の運転手に連れられて、彼がいう第二次世界大戦において徳宏で戦死した日本軍将校の霊を守護霊とする女性シャマンの村へ向った。

車の中では、運転手が熱心に女性シャマンのことを紹介した。

「彼女はいつからザオモーになったの?」
「いや、ザオモーではなくて、精霊が取り憑いたんだ。それで時々その精霊を呼んで話をするんだ。」
「それをザオモーと呼ぶんだよ。それでいつから?」
「なんか、体の調子が悪くなって病院に行っても治らなかったんだ。それで別の村のシャマンに見てもらったら、精霊が取り憑いていると言われたらしい。」

訊くところによると、彼女は40代前後で、とても性格がよく、明るく朗らかな人だという。
「ときどき、ザオモーになると精霊のせいで性格がおかしくなる人がいるけど」

「そんなことはない。彼女はとてもいい人だよ。守護霊の日本軍将校は前世で人を殺しすぎて、来世に転成するために、こころを入れ替えて「好いこと」をしたいと言っていたよ。」

どうやら、彼女が別の村のシャマンに「診て」もらったとき、その日本軍将校の精霊は善行をしたいから、取り憑いたのだという。その精霊が善いことをしたいから、彼女に取り憑き、彼女はそれを受け入れて精霊の力で現世のひとたちの役に立たなければならないそうだ。

「仏を信じていないの?」
「彼女の家の老人はとても信心深い人たちだよ。父親は医学を学んだことがあったらしく、ちょうど今日ビルマに薬草を探しに行っていて居ないそうだ。」

彼は続けて言う。

「だから、今日が都合がいいんだよ。老人がいると彼女に憑依させないんだ」
「でももう結婚しているんでしょ? 家は別々でしょ?」
「よくわからないけど、生家じゃないとだめらしいんだ」

運転手はあまりザオモー(シャマン)について詳しくはなかったが、こういうことだろう。
タイ族は上座仏教を信仰するため、シャマンになったといえども、仏教徒であることに変わりはない。
しかし、仏教の文脈では、シャマンは「迷信」として否定される。精霊の名をかたって人をだます者たち、と。
シャマン本人は、そういった言説を受け止めてか、以前よりいっそう熱心に仏教を信仰する。
そして、時がたち、本当にシャマンとなることを決めたら、自分の家に祭壇をつくり、そこに小さな仏像をおいてあがめるのだ。

仏教徒と言えど、ここらのタイ族は普通、自分の家に仏像をおくことはない。
信仰心のある人は皆、自分の家におかず、寺院に寄進するが、シャマンだけは違うらしい。

以前、僕が住んでいた村でも一人の女性がシャマンとなった。
そのとき、彼女は村人たちを招いて儀礼を開き、村の知識人を招いてパーリ語の経典を朗誦し、仏像に「こころ」を吹き込んでもらって、家で祀るようになった。
その前後数日は毎晩のように村人を招いて守護霊を憑依させ、「うた」をうたった。
守護霊を「遊ばせ」て、喜ばせるためだという...。


運転手の話から推測して、そして後ほど彼女に会って話をしたとき、解った。
彼女は自分の家にまだ祭壇をもっていないのだ。
生家には老人が非常に熱心に仏教を信仰しているので、立派な祭壇だけがある。
無論、仏像はないが、仏と守護霊を祭祀できる、それにふさわしい祭壇だということだろう。

家の老人はシャマンを信じていないし、彼女に憑依させたくないという。
それで、老人がいないときが一番気楽に憑依を行えるというのだ。

家の長男とその嫁の話では、彼女は毎晩必ず家に来て仏と守護霊に祈りを捧げるのだという。

ワン母が「シャマンは、必ず「ことば」を練習しなくちゃいけないんだよ。」と言った。

シャマンが憑依するためには、なめらかな口調で韻律と韻文に凝った祝詞を唱えなければならない。
祝詞は普通、男性知識人が仏教的な文脈などで唱えるために練習するものだが、シャマンも同じだ。
ただし、男性知識人が文字をつかって覚えるのに対し、女性シャマンは自分の創意工夫と別のシャマンから教えられた、あるいは盗み知ったことばを練習するのだ。

つづく








コメント
ひっぱるねえ。
 
 
2012/01/22(日) 02:09 | URL | 亮介 #-[ 編集]
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