中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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古いひょうたん笛―ドァン族のブロイ、タイ・ヤイ(シャン)のビーホァム


しばらく忙しくて記事を書く余裕がありませんでした。

今日は、僕がときどき演奏している古いひょうたん笛(中国語:フルス)を紹介します。
マイクをつかうような演奏会ではめったに用いませんが、こじんまりした演奏会では特徴的な音を聴いてもらいたくて演奏します。

簡単な紹介ですが、とりあげるのは中国雲南省やビルマに住むダアン族(徳昴族)あるいはパラウン族が使っていた「ブロイ」と、おとなりビルマのタイ・ヤイ(シャン)や雲南省耿馬地域のタイ族が使っていた「ビーホァム」です。

   B2012hulusi004.jpg
 ※ 上がダアン族のブロイ、下がシャンのビーホァム。
なんといってもその特徴は、繊細な音です。
現在、市販されている中国のひょうたん笛改良タイプは、舞台用演奏に耐えるべく十二平均律と音量の拡大が試みられ、メロディ管の指穴の位置と、リードの大きさや厚さに工夫が施されました。

それに対し、古いひょうたん笛は、音が非常に小さい。そしてなんといっても特徴的なのは、その音にあります。

日本人にとっては馴染み深い「サワリ」の音。

現代ひょうたん笛は改良の過程でサワリの音を「雑音」として排除する方向性をとっています。今も、市販のひょうたん笛を買って練習しているうちに、音が「ざらざら」として雑音じゃないのか、この雑音を直したい、といった質問がよせられることがあります。

現代ひょうたん笛の音が、まっすぐなイメージなら、
古いひょうたん笛の音は、か細く、不安定な音のうねり、ざらざらと擦れる音など、不安定であるゆえの表情豊かな音の響きを聴くことができます。

そして、かつて、ひょうたん笛が演奏されていたシチュエーションをイメージしてもらいましょう。

ひょうたん笛は、夜皆が寝静まろうとする時刻に、男性が思いを寄せる女性の家のそばから演奏したものです。
ほかの村から来る男の子は、村に入ると演奏を始めました。
外の空気はしんみりと、日中のにぎやかな動物たちの鳴き声や、農作物のざわめき、人びとの溌剌とした声は聴こえてきません。
かわりに、ひんやりした風が流れ、どこかの囲炉裏やかまどから流れる煙とにおいがします。どこかの家のかまどの火が鳴る音、遠くに聴こえる犬の遠吠え、村のなかを流れる水の音、暗闇の自然にひそむ虫たちのささやく鳴き声、草木のやさしいざわめき…。

夜の空気、音風景には隙間を感じることができます。だから、古いひょうたん笛の小さな音は、夜の音の隙間をぬうようにして流れ、響きわたり、夜の自然の音風景と溶け合い、想いを寄せる女性やその家族にハーモニーを届けました。


つけくわえれば、夜寝る前の仕事として、女の子はローソクやランプの火のしたで機織をしたそうです。
織り機にぶらさがっている竹の重しは、機を織るたびに、「からんころん」と乾いた竹の美しい音を響かせます。
竹の重しの音も好みによって調整されていました。

自分で機織を習ったときの感想ですが、リズミカルに織れるようになると、糸が擦れる音やシャトルを叩く音、竹の重しの音が旋律を奏でるようになります。

機を織ることも、糸と糸が擦れ合い、音が鳴り、やがて布を生み出します。
音も、主張しない自然な古いひょうたん笛のサワリの音が、自然の音と擦れ合い、ひとつの、そして壮大な旋律を生み出していました。


僕自身はこの「サワリ」の音がすごく好きです。ライブで僕の演奏を聴かれる方も、きっと気に入ってくださると思います。

A2012hulusi001.jpg
ダアン族のブロイ
孔が表に7つ、裏に1つあり、現代ひょうたん笛の6対1とはタイプが異なります。現代ひょうたん笛と同じタイプもあります。
これをダアン族は「ブロイ・サイコ」といって、「サイコ」という曲を演奏するときに使います。ほかの曲を演奏するときは、一番上(手前)の孔を蜜蝋などで塞ぎます。
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