中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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タイ族の楽器には「ディン・サム・サイ」(三弦)というものがある。

4,50センチほどの長さの小さな楽器だ。
ひょうたん笛と同じように、いやそれ以上にかつてはタイ族の音楽で重要な存在だった。
タイ族の口頭伝承や古典文学にはこのディンサムサイがよく出てくる。

今回、思い立って再びこの楽器を探すことにした。
この前日記で書いた笛の老人の村はかつてディンサムサイ職人が多くいたという。そしてあの老人も、かつては自分でディンサムサイを作って演奏していたという。
もちろん、僕は笛の老人にディンサムサイを作ってほしいと頼んだ。




僕は98年に一度この楽器を生で聴いたことがあった。
いまでもそのとき録音した音楽をよく聴く。
ギターなどに比べればとても小さな音だけど、とてもやわらかくて優しい音色がする。

タイ族の人たちもこの楽器の音色を
「ディン、ドロン、ディン・・・」
と口ずさむ。

残念ながら、今ではルイリー地方でしか名前を聞かなくなった。そして、楽器そのものもなくなっている。

98年、僕はこの楽器の音色を聴いた。
あるおじいさんをたずねた。全身虎やタイ族文字やビルマ文字、呪文の刺青を入れたとても珍しい老人だった。
その息子さんがディンサムサイの名手だった。

若い頃は、夜になると毛布をマントのようにまとい、好きな女の子の家の裏手に立ち、楽器を奏でて想いを伝えたという。
そのとき、たいてい若者たちは楽器を手前に抱えて演奏するのではなく、なんと背中のほうに楽器を回して周りの人たちに見えないように演奏した!

後々知ったのだが、タイ族だけではなく、山に住むダアン族の人々も同じように背中で楽器を演奏する。
ハニ族やリス族は逆に楽器を頭に載せて弾く。

2001年ごろ、僕は再びこのおじさんを訪ねたのだが、残念ながら楽器は親戚がどこかに持っていったきり、もう手元にはなかった。

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友人の兄があるうわさを耳にした。
なんでも、とても珍しいディンサムサイを持っている老人がいるという。
友人のお兄さんもこれをみて驚いたらしく、どうしても譲ってほしかったが老人は手元に残したいといって譲らなかった。
僕はお兄さんにバイクで連れて行ってもらってその老人を訪ねた。
ルイリーのとある村、霧の中のとても綺麗な村だった。

僕らが訪れると老人は快く楽器を見せてくれた。

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ため息が出るほど「美しい」ディンサムサイだった。
残念ながら、頭にあったという孔雀の彫り物は欠けてしまい、楽器の弦も切れていたり、かなり傷んでいた。

胴の部分は「猫」がかたどられ、楽器にちりばめられた鏡やガラスが見事に輝いていた。

この楽器は4,50年以上前にこの老人の木匠だった祖父が作ったという。

老人は3人兄弟だった。
そろそろ恋人を探してもいい年齢になったとき、この祖父が3人それぞれに精巧なディンサムサイを作った。

一人には、「魚」の形のディンサムサイを。
一人には、「牛」の形のディンサムサイを。
一人には、「猫」の形のディンサムサイを。

それぞれが結婚し、時がたつと、ほかの兄弟が使っていたディンサムサイは無くしてしまった。
この老人は祖父が作ったディンサムサイをずっと無くさないようにとっておいた。

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今は、この楽器はかわいい孫のおもちゃになっている。

ものは、触れる人とものの間に不思議な関係を築く。
それは思い出だったり記憶だったり。

老人とこの楽器の思い出は音だったり、祖父の優しさなのだろうか。

このままこの楽器がいつか壊れて無くなってしまうのだろうかと思うと、とても切なくなった。

ぼくはどうしてもこの楽器の音色が聴きたくなった。
だから、今度来るときに、ぼくが楽器を直して演奏できるようにしてもいいかたずねた。

老人は快く承諾してくれた。


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