中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
演奏も終わり、はやく昆明にいきたくてしょうがない。

昨日はグループのリーダーとある日本人のおじさんとチェンマイのとある一角をぶらぶらしていた。
僕たちはあるテキスタイルの店で不思議な女性に会った。
あとから知ったのだけど、いろんなお客がこの店に入りたくてもいつも店は閉まっているという。僕たちはラッキーだったのか…。

夕方、
このおじさんが仕事の話をあるギャラリーでしているあいだ、おじさんの勧めで近くのテキスタイルの店に行ってみた。

不思議なお店でインドのラジャスタンから持ってきたテキスタイルや衣装、ラオスなど東南アジアから持ってきたテキスタイルで満ちていた。


店の主人は30台半ばくらいの女性で、見た目が僕の知り合いのイタリア人女性に似ていた。ただ眼がとても力強くて、壁を作っているのではないのだが、他人から心をまだ和されない強さを秘めている、そんな感じの人だった。

話をしていると、このお店に移ってきてまだ3ヶ月くらいで、それまではインドや、バンコク、北部タイのパイを自分が集めたテキスタイルとともに転々としていたようだ。

おかれているものも不思議な趣味で、売り物か、と聞くと、「これは売らない。これはわたしのコレクションだ。」
「これも売らない」
「あれも売らない」
売るものはあるんですか、ときくと、
「もちろんあるけど、私は今の生活に満足している。私の大好きなテキスタイルに囲まれたこの店にいるだけで満足している。別にものが売りたいわけじゃない」と答えた。

3階建ての建物で、2階も見せてくれた。2階には東南アジアのテキスタイルが所狭しとしまってあった。

物は売らない。けど、すこしなら、私のコレクションを見せてもいい、かもしれない。
結構気分やさんだ。チェンマイでも手に入りそうなカレン族の織った足拭きマットも色とりどりおいてあったが、これはあと4,5年は売るつもりはない。この色を見ているのがすきなんだ、という。
店もコレクションを私が楽しみたいから開いたのだけど、2階のテキスタイルの山に一人で囲まれていたいときは店を閉じているという。

しばらくして、僕らは日本人のおじさんと一緒に再びやってきた。運良く女性は店にいた。

おじさんは30年以上前にラジャスタンにハネムーンで訪れたことがあったらしく、そのとき記念に湖のほとりに土地を買って、この30年ずっとほったらかしにしたままだという。
店の女性が来週またインドに行くというので、「ついでにみてきてくれ」と。

おじさんはなかなかの目利きでビーズ入りの細かい仕事をしたテキスタイルをみて、もっとみせてくれといった。
女性はいくつかコレクションを広げて見せてくれて、中には売ってもいいものもあるという。
おじさんは一枚の布を取り出して買いたいといった。

女性はきっと一度口にしたことは曲げない人らしく、わかったと一言答えた。が、それからしばらく、ずっとそのテキスタイルを広げてはたたんで、広げてはたたんで、自分で作った肩掛けかばんに詰めたかと思うと、また取り出して広げては眺めていた。

おじさんは売りたくないのなら大事にとっておけばいいといったが、女性は「きっと私はこのテキスタイルと同じ素敵なテキスタイルには二度と出会うことができないから」
と、さびしそうに、布をいとおしそうに触ってはしばらく別れを惜しんでいた。

そして「私はここにきて3ヶ月たったが、あなたが始めての客だ」といった。

なんとなく、この女性はこのコレクションを一つ一つ買うときに、なにかの物語を染み込ませているんだと思う。きっとテキスタイルはいつか売ってもいいと思っているのだろうけど、人が思い出を忘れるように、テキスタイルに染み込んだ思い出が消えたとき、人に譲るのかもしれない。

「私はインドにいたけど、だれとも知り合いはいないし、知り合いたいとも思わなかったし、友人も要らなかったし、一人で自分と旅したかった」
といった。

しばらくいろんな話をして、夕食を一緒に食べようと誘ったのだけど、断固として「私を一人にしてほしい」といった。

そういえば1度目に訪れたときも、さっき店に入ったときも、彼女は眼に涙を潤ませながら糸のほつれたテキスタイルやカバンを直していた。

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