中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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今年の2月、僕の親友がまた一人結婚した。

7年くらい前に昆明の雲南民族大学(当時は学院)で勉強していた彼と僕はひょうたん笛の先生の家で出会った。

笛の先生と同じ郷鎮の出身でタイ族だ。

僕は彼の村には何度も訪れている。いついっても、とてもとても美しい村だと感じてしまう。

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盆地を横断するように流れる川を渡し船でわたり、竹やぶの道をしばらく歩いていく。視界が開けたその目の前に広がる畑の向こうに村がひっそりとある。

冬の霧に包まれた面影も美しい。
真夏の灼熱の碧い空のもとにたたずむ村も美しい。
雨季の入道雲が広がる青空を風景にある村も美しい。

- - -

徳宏タイ族の結婚式はたいてい3日間行われる。
それ以前より長老や家族同士でさまざまな儀礼が交わされる。

友人の奥さんはここから5時間ほど離れたルイリーのタイ族で、これまた地域が離れているので風習が異なる。
予定では、先に彼の故郷で結婚式を挙げ、1ヵ月後に奥さんの故郷で結婚式を挙げ、最後、4月終わりに都会で仕事仲間を呼んで漢族式の披露宴を行う。実に3回の結婚式を挙げてしまうのだ。

さて、彼の故郷で行われる結婚式はかつてないほどの規模の結婚式になった、…といわれている。

客人をもてなすために準備された豚は5匹。
4匹の豚は200から300キロ(!)もある巨大な黒豚。彼のお母さんと親戚が結婚式のためにゆっくり大切に育ててきた豚だ。
もう一匹の豚は子豚で、豚の丸焼き用。
そして、数十羽の鶏…。

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もちろん、解体は男性の仕事であり、豚トロなどのおいしいところはみんな先に食べてしまうのだった。

くいしんぼうである!!


結婚式前後2週間くらいはさまざまな人々が彼の家を出入りする。会場は彼の家。豚を〆るのも、解体するのも彼の家の庭や裏庭で行われる。肉の解体や調理、野菜や肉をミンチにたたく音が朝から晩まで鳴り響き、老人たちのおしゃべりの場となり、夜中まで若者たちが酒を飲みさわぐ場となり、まさに彼の家は修羅場と化す。

さまざまな匂い、音が錯綜する中で二人の結婚式は行われる。まさに非日常の世界でタブーがなくなっている状態。


彼の結婚式のために、村の近所の女性や男性が初日の朝早くにやってくる。
第一日目は朝から(前日から)料理を準備することに始まり、昼から親戚が訪れてくる。初日と二日目は基本的に親戚がやってきて食事をする。そして3日目が村人や友人を招いて朝から晩まで食事が振舞われる。もちろん2日目から新郎新婦、特に新郎は夜中まで酒を飲まされる…。

結婚の儀式は2日目の夜行われる。結婚式といっても、2日目の夜に儀礼を済ませると、3日目からは新婦は朝5時におきて食事の準備や家事をはじめなければならないのだ。このとき、ここで働かないと、近所の女性から陰で小言を言われてしまう…。既婚女性のグループに入るためには結婚式で家事をきちんとこなすことが一種の通過儀礼になる。


家の上座は老人が食事をする、下座では調理や若者、客人が食事をする。
夕方、結婚の儀礼は老人たちが座ってくつろぐ家の正堂で行われる。

まず、新郎新婦が、正堂に上がる階段の上におかれた「斧」と火のついた「薪(まき)」をまたいで、後ろ足で階段の下に蹴落とす。
そして、
老人たちの前に跪き、夫の父母を拝み、祖先に対しても礼をし、一人ひとりから祝福の言葉を受ける。

これで晴れて夫婦となるのだが、この儀礼が行われる以前に、もっと重要な儀礼が行われている。

たとえば、
ここらでは女性をあらかじめ女方の家から「誘拐」してくる。誘拐の仕方もいろいろあるらしい。
誘拐してきた女性が家に来ると、その家は夜中村人たちにたいして爆竹を鳴らして知らせるのだ。

それから媒介人を挟んで女性がすでに男方の家で働いていることを告げ、結婚の費用や日取りを交渉する。この交渉も伝統的な風習では非常に難しく、面白い過程でもある。

結婚式数日前に女性は再び実家に戻る。そのとき、女性は家に入れてもらえない場合もあり、門の前で泣きながら歌を歌うという。
そして結婚式当日、新郎が迎えに来て再び女性は哭き歌を歌い家を離れる。村の「門」では世話役(仲介)の女性二人が新婦の到着を待ち、新婦が到着すると、村の門の前で頭にシルクの赤い布をかぶせ、線香をたいたり、酒を用意して村に新たな村の成員が訪れたことを伝える。

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さて、夫婦の契りと老人の承認、「天」の承認がえられたあと、新郎新婦は寝室に移る。ここでは二人の世話役の女性が新婦に既婚女性の民族衣装を着せることから始まる。
頭の髪型を変え、既婚女性の目印である帽子(もしくは頭飾り)を身につける。
そして、再び、寝室のベッドの前で夫婦の契りを交わす本当の儀礼が行われる。鶏肉、豚肉、ご飯、酒など、それぞれが1組ずつ用意され、世話役の女性がそれらの料理や酒を両手に持ち、腕を数度交差させ、腕を交差したまま新婦と新郎に料理をたわし、食べさせる。


これが終わると、いったん新郎新婦は外に出る。


面白いのは、このあと世話役の女性2人がこっそりベッドにもぐりこみ、「子作り」の様子を再現するのだ。

新郎新婦は部屋の外でそのようすを「聞く」。

中からはベッドのきしむ「音」や「あえぎ声」が聞こえてくる。
冗談交じりの会話も聞こえてくる…。

小さめの結婚式では老人たちや親戚の耳にもこの様子が聞こえ、さまざまな冗談話や今回の世話役による擬似子作りの儀礼の批評が面白おかしくなされる。

僕は特別その世話役の様子を部屋の中で見せてもらったことが何度もあるが、おばちゃん二人の行動は面白い。最初はちょっと恥ずかしそうに、あんたが声だしなさいよ、ベッドをもっとたたかないとそれらしくきこえない、ちょっと抱き合いながらじゃないと雰囲気が出ないわと笑いながら行う。


一通り子作りを再現し、笑いつかれて落ち着くと、二人はベッドの中で祝福の言葉を「ひっそり」と唱える。

それは新郎新婦には聞こえることはない。


そして、二人は「あくび」をする真似をしながら、「鶏が鳴いている、もう朝だー、朝だー、おきて仕事しなくちゃー」といってベッドを元に戻し、部屋を後にするのだった。


漢族の結婚式では針を隠したりする。タイ族の結婚式も似たようなところが多い。

そのあとは、ひたすら酒を飲む。

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今回は新郎の姉にジンポー族(カチン)の友人がいて、ジンポー族の楽団を招いて客人を迎える行進曲を演奏してもらっていた。

そして夜になると、みんな酒がまわってきたのか、庭にあつまって肩を組みながらジンポー族の踊りを踊り続けるのだった。

3日間でおとずれた村人の数はおよそ1200人とか…。
食事にとずれた人が入りきれず、近所の家2軒も使うほど。

かつてない規模の結婚式であった。

いつまでもお幸せに!


RIMG1611.jpg  

コメント
なんともはや
元気そうだね。

通過儀礼という事を我が身に重ねると、
色々の事を考えさせられます。
面白く読ませて頂きました。
体験記としては十分とは思いましたが、承認のくだりをもう少し整理したらいいのではないかと思いました。
では又。
 
 
2007/04/29(日) 21:30 | URL | こばやし #-[ 編集]
タイ族の結婚式について質問
サトルさま

ご無沙汰しています。昨年、写真家竹田さんの東京での写真展懇親会でお目に掛かりました、者です。
会社からメールを出しております。

この春に雲南タイ族の取材を企画しようかと思案して、色々ネットを検索している最中にサトルさんのブログに辿り着きました。

タイ族の結婚式で、男性は貢ぎ物として家財道具を持って花嫁の家に向かい、花嫁は母親から金のかんざし・ベルト・箸をもらう、という習慣があると聞きましたが本当でしょうか?

実際に知りたいのは「箸」の部分だけですが、タイ族の結婚式で「箸」が表に出てくるようなシーンはありますでしょうか?
例えば、母親から花嫁への贈り物であったり、新郎新婦の食事を特別な箸で食べているという様なシーンです。

色々調べているのですが、生活道具であり元来漢族から伝承された「箸」に関してはなかなか、良い資料も見つからずに、立ち往生しているというのが現状です。

簡単で結構ですので、御教授頂ければ幸いです。

ご多忙中とは思いますが、宜しくお願いいたします。


ロハス研究所
レストラン調査室
イケメン調査員(自称)
ナカニシ

 
 
2010/01/29(金) 16:45 | URL | ロハス研究所・イケメン調査員 #-[ 編集]
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