中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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造り ―いつか飲みたい消えた


タイ族の男どもが愛してやまない米の

最近では農村部で造るがおいしい、という噂が各地に流れ、都市部の政府役人やらが理由をこぎつけて村にやってきては数十キロ(リットル)、時には100キロ以上のをカメごと買って行く。

人によっては買ったをさらに数年寝かせ、自分が退職するときに飲むとか、仕事(…汚職とか)でも「自慢」の酒として振舞われるらしい。

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造りののシーズンは春節前後数ヶ月である。

今回は機会があったので造りすべての工程を見ることができた。

中国では「白」と呼び親しまれているアルコール度数40度以上のお
ここタイ族地域でも40度以上のが好まれている。
の材料は白米(軟米)かもち米。
僕が思うに、各地でいろんな酒を飲んできたが、一番うまいのは僕がよく行く山のふもとにある小さな村の酒だ。今では地元ではかなり有名になってしまい、工房までつくられたほど。

でも、工房から出荷される酒は、家々でそれぞれ造った酒を持ち合っていたり、大量生産のため、味が混ざっていて苦味がある。

ここでは酒に苦味と酸味はもってのほかである。

というわけで、工房ではたらく家の人でも、飲む酒は自分の奥さんが醸造した酒である。女性は大変忙しい。

・・・・・(この部分は長いので読まなくてもいいです)
1.白酒初体験

10年近く前(9年半)、昆明に来てまもなくの頃、寮のルームメイトが武術を習っていた。
僕もかつては武道をたしなんでいたので、一緒に食事をすることになった。
あの頃は、来たばかりで「白酒」という概念すらなかった。

白酒初体験は今でも忘れられない。といっても、ほとんど覚えてないけど。

武術家の家で夕食をいただくことになり、テーブルに座る。
初めて白酒を飲むと言うので、だまされたのか、まず普通の水やお茶を飲むような高級(そうな)コップになみなみ白酒を注がれた。
お初にお目にかかる武術の先生を前に、中国式に乾杯をして一気飲みをすることになる。

これは「におい」がおかしい、普通の日本の酒とは違う、いや、でも飲まなければ。ごくごくごく・・・

ルームメイトが笑いながら「大丈夫?」と言うが、「礼儀なので、もう一杯ね」といってまたなみなみ注がれる。

今度はみんなで乾杯。

二杯目を飲み終わり(半分だったか…)、ううむ、まだいけるか、とおもったが、さあ食事をしようと箸を持ってしばらく、トイレに駆け込み、そのまま数度吐いてしまい・・・食事もせずに眠りにつく。その晩はそのまま武術の先生の家に泊まった。

それはいい経験になりました。
それからというもの、僕の白酒適応度数は一気にレベルアップし、中国で食事に白酒がないのは食事ではないと思えるほどになった。

そして、笛の先生と食事を繰り返すとようやく、真髄がわかった。
ちょびちょび白酒を飲み、口に含んだ酒をごくりとのむと、眉をひそめて「かーっ!」と息を漏らす。

円卓の料理をゆっくりつついて、話をしながらゆっくり酒を飲んでは「カーッ!」と息を漏らす。
そんなスタイルが楽しくてしょうがなかった。


・・・・・・
2.幻の酒

それから、しばらくたって、村に通うようになると、ある日友人が土に10年埋めて寝かせたと言う酒カメを取り出してきた。

しかも、この友人の村はもっとも酒造りが上手いといわれている村だった。
きれいな湧き水が豊富なこの村の酒は、造りたての酒でもおいしいのだが…。

この10年ものの米の酒は、言葉にあらわしようがないほどおいしかった。なぜ、それほどまでにおいしいのか、おいしかったのか、7,8年たった今、その答えがわかってきた…。


かつて酒造りに必要な「麹」は自家製だった。

山の植物を2,3種類摘んできて、それを乾かし、炊いたもち米とコネ混ぜ、たたき混ぜて、餅状にして保管する。醸造する際にはそれを砕いて用いたという。

残念ながら、改革開放以降、この地域には工場で作られた麗江製の麹が輸入されるようになり、手間がかかる自家製の麹は使われなくなった。

友人は、昔はよく山に放牧に行き、帰りにこうした植物を摘んで帰ったものだと、教えてくれた。


また、酒の話でもりあがる老人やおじさんたちと話をしていると、「女性の手」が話題に上がった。

女性は朝から晩まで働く。


掃除、洗濯、育児、調理に藍染、そして牛の糞の燃料作り・・・。


ちょっとまえまでは村の各家庭の塀には牛の糞とわらをこねた燃料が両手のひらくらいの大きさにこねられて、乾かされていた。

燃料を作るのも女性の仕事だった。女性は牛の糞を集め、わらなどを混ぜて燃料を作る。その手にのこる「なにか」が、酒の味に一役買っていた、と男たちは言う。

また、酒造りの工程でたいた米を地面に広げて乾かす。
今ではコンクリートの地面が増えたが、家によっては土を踏み固めた地面に、たいた米を広げて荒熱をとっていた。そう、「土の味」がまざっていた。地面をあるく人の垢とか、米に寄ってくるアリ、そんな「自然のごみ」がまざっていた。

人間は自然と一体、そんな言葉が納得できるような感じだ。

そんな手作りの酒が僕はますます好きになった。

・・・・・・
3.酒造り

酒を造るのは女性の仕事である。

酒造りに際して、女性にはいくつかのタブーがあった。生理の時に造っていけないと言うのはもちろん、太鼓や楽器をさわってしまうと酒がすっぱくなる、とか、酒造りの間、男は厨房をあるくことはできないとか、そんな話がいくつもある。

酒を50リットル近く造るのに必要な米は100キロ。
まずは米を洗って一晩水に寝かせ、朝早くから米を蒸し炊きする。

場合によっては、たいた米を二度炊きする。

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炊いた米は地面に広げられ、荒熱を取る。

それから麹をまぶし、よく米となじませるように手で混ぜ合わせる。

中心に穴の開いた大きな鍋を用意し、穴を竹で編んだふたでふさぐ。これは発酵が進んだ米から水が滴るようにするためだと言う。そして鍋を三脚の上に載せ、三脚の下には米から流れてくる水をうける容器を置く。


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鍋にはさらに麹が振りまかれ、数時間置かれた酒のタネがこれでもかというほど鍋に盛り込まれる。
それから、刀を米の上に置く。これはなんでも、夜中鬼(精霊)がやってきて酒を盗み食いしないようにするためだとか。鬼(精霊)が手をつけた米はすっぱくなるという。

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布やビニールシートをかけて、2,3日そのまま発酵させる。
2日目の夕方には米から発酵してできた水が流れてくる。味は鍋の鉄の味に、甘酒のような甘い味がする。
発酵が程よく進んだ米にはカビが生えてくる。
このカビも捨てずに、発酵で流れてくる水と一緒に、大きなカメに移し換えられる。数日後、そのカメには水が加えられる。それからさらに20日ほど寝かせて発酵させる。

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これで酒のタネができあがる。

日を改めて、酒を蒸留させる装置を準備する。
いつも調理に使う大きな鍋に、酒のタネを流し込む。そこから少々タネの水気を切って脱穀とこね合わせたつなぎをつくる。

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鍋にはふたがされ、鍋と蓋の間の隙間には先ほどのつなぎが埋め込まれ、蒸気が外に漏れないようにする。

蒸留した酒を冷却するためのカメを設置する。カメには水がなみなみと注がれる。
このカメは一見普通のカメだが、器の内部は空洞になっている。蒸留された酒がこの内部を通り、かめに注がれた水によって冷却される仕組みになっている。

酒の蒸留には弱めの火で調節される。
一滴、一滴、少しずつ、少しずつ、酒を受けるカメに雫が落ちていく。

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女性はときたま味見をしながら火加減を調整する。火が弱すぎるとアルコール度数が非常に高くなる。火が強すぎると、今度は酒が苦くなってしまうのだ。

味を見て苦味が出てくると、蒸留は終わる。

実に一日がかりの仕事である。

蒸留したての酒はそのまま飲むことはできない。2,3ヶ月くらい軽く蓋をして日陰に置かれる。
しばらく寝かせられた酒は、牛の糞とわらでこねた燃料とおなじもので蓋をする。
こうして密封された酒は、裏庭に埋められ、数年ほど寝かされるのだ。

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最近では、男どもの酒飲みのペースが速いので、3,4ヶ月たった酒は土に埋めずにそのまま、男たちの胃の中に消えていく。
機会があったら、山の植物で麹をつくって、幻の酒をつくってもらいたい、と思った。

・・・・・・

ちなみに、蒸留された後の残りかすは捨てずに、豚のご馳走となるのだ!!!
農村の豚がなぜおいしいのか? 

それは酒かすを食べて、酔っ払うからなのだ、と、想った。

豚君たちはぶひぶひ言いながら、こぞって残りかすを食べる。
食べ終わると、酔っ払ったのか、豚君たちは心地よく眠りにつくのだった。

女性は酒を飲むことはない。
男性は酒造りには一切関わらない。男は出来上がった酒を飲む。
だから女性は醸造の過程の「とげとげしい」酒の味を味わって酒造りの塩梅を計るのだ。女性がいなかったら、男どもは永遠においしい酒をのむことはできなくなるだろう。

こうした酒の味見、その「味覚」は代々母親から娘へと女性にだけ受け継がれてきたのだ。
男どもはみんな忘れているけど、女性は偉大なのです。

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