中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
よみがえらせた竹細工

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僕は音楽だけが好きだからここにいるという理由はない。もちろん音楽も好きだけど、ものづくりの「わざ」も大好きだ。音楽も僕自身が演奏してうたうから、ものづくりも自分でやってみたいから、根底にある「わざ」を学ぶ姿勢、わざの魂を自分の身体に取り込もうとすること、それは同じだと思っている。

中国西南部から東南アジアにかけて竹細工は日常の様々な場面で今も用いられている。その種類は何百種類にも及ぶのではないだろうか。

タイ族も竹細工で非常に有名だ。しかし、近年では開発も進み、竹やぶがますます減っている。かつては祭りなどが行われたり、毎年の村を挙げての掃除では、必ず竹や木を植えて自然環境を維持してきたという。自然とともに生きることはただ単に森林を切り開かないことだけじゃなく、自分たちで緑を増やしていくことでもあったようだ。

タイ族の竹細工といえば、買い物や移動時に肩に背負うかご、手持ちのかご、農作業に出かける時に腰に掛けるかご、魚獲りのしかけ、米を運ぶかど、などが一般的に目にする。やはり使われる竹細工の種類はますます減っている。

ある日、僕は母の生まれた村に遊びに行った。とある家の居間で不思議な竹細工を目にした。
芒市周辺のタイ族の人々は居間に仏壇を作って写経した経典を祀っておく。瑞麗では仏像を祭るのだが、こちらではせいぜい仏の絵が張られるくらいだ。
僕が目にした竹細工は経典をしまっていた。なんでもかつては寝室において貴重品を入れてしまっておくための蓋付のかごだった。初めて見た竹細工だったので近くで手に取らせてもらって眺めた。もう5,60年は使っているという。もう家に残された古いものはこれだけだ、といっていた。
タイ族語では「ウップ・ダー」(ハップ・ダー)という。

つくりが細かく、とても美しかった。
家路に着くころには心が奪われてしまっていた。ますますほしくなった。
僕は早速あちこちでこの蓋付かごを作れる人はいないか探してみた。芒市のマーケットの日には竹細工職人が集まってものを売る一角があるのでそこで老人たちに一人ひとり聞いてみることにした。

結果は誰一人として作れる人はいなかった。かなり高齢のおじいさんに聞いても、昔から作ったことはないという。ごく一部の職人が作っていたようだ。

話を聞いて、そのうち家をいろいろまわっていると、各家庭にいくつか大きめの蓋付かごが残されている。なんでもかつてタイ族の女性たちは結婚する時にもっていく嫁入り道具はすべて蓋付かごだったという。衣類をしまうための大きな蓋付かご2つ。その他小さめの蓋付かご、一番小さいのものでは、僕が見た貴重品を入れる蓋付かごだ。

今ではこうしたものを買い求める人などおらず、みな家具屋で木製のタンスなどを買う。

僕は母からある有名な竹職人の名前をきいた。すでに亡くなってしまい、その息子たちも家業をついでいない。でも、この老人が作った蓋付かごはきっと今も誰かの家に残されているのではないか、という。さっそく、マーケットに布を売りに来るおばさんたちに聞いてみる。
そしてあるおばあさんがわざわざ見つけてきてくれたのだった。

非常に細かい仕事。なんでも、ある家が4、5代くらい受け継いできた蓋付かごだという。


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僕はそれを安く譲ってもらった。ここでは古いものは安いのである・・・。

日本での研究公演が迫ってきて、母は何かお土産を買っていかなくていいのかと僕に聞く。
そこで、お世話になる2人の方にこの竹かごを贈ってはどうかという話になった。

僕の母も初めはこんな古いものをそんな値段で買ってきて、と目もくれなかったが、今では竹かごが大変気に入っている。ちょっと自分もほしくなったのだろうか。

失われてしまう技術を守ること、そしてそれはうたを歌いついで行くことと同じように見ていた。

さっそく何人かの有名な職人に話を持ちかけて作ってもらうことになった。どれもためし作りは失敗作で昔の竹かごには及ばない。
そして、やはり母の村のあるおじいさんの技術がすばらしかったので、その人に再び頼んで作ってもらうことにした。そのおじいさんがつくった蓋付かごは失敗作もあわせて全部で6つ。
6つ目になるとできばえはいい。

手間がかかったが楽しかった、と一言。
僕は日本から帰ったらこの老人から竹細工を習うことを決めたのだった・・・。

雨季が明けるころに、次は今では作られない銀細工を復元してもらおうとたくらんでいる。

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