中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
こころのしらべ 旅の記録その3 『うたで綴る旅日記』 2008年5月徳宏タイ族日本公演


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僕らが出発する頃になると、あちこちで僕ら4人が日本に行くことが噂で広がっていた。もちろん、日本に行くことはごく僅かな人のみが知っているはずだった。噂は瞬く間に広がり、みな今回の演奏旅行のVCDを、首を長くして待ち望んでいる。

日記とは文字でその日の感想や感情を書き記すものだろうか。
僕はもともと今回の旅をビデオカメラで記録したいと思っていた。もちろん、今回は団長兼ガイド兼通訳兼演奏者兼カメラマン等々をすべて僕がやらなければならないので記録に集中できたわけではなかった。



徳宏では僕の母とフーカムおじさんは、いつもどこかに行く時、移動中の暇つぶしにうたをうたう。フーカムおじさんがうたう歌詞を母は厳しくチェックし、韻の踏み方やどういった語彙を使うべきかと教えるである。

今回も家を出てからずっと陽気な二人は道中うたをうたう。
そこで、今回の旅を「うた」で記録しようということになった。もちろん、記録してVCDに焼いてお祭りの時などに売る目論見だ。うたで綴る日記のような映像にしようというのだ。

日本ではかつて松尾芭蕉が日本を旅して俳句を残した。母とフーカムおじさんはタイ族の「うた」を用いて即興で感想を記録する。いったいどうしてタイ族の人たちはここまで「うた」をうたうこと、聴くことが好きなのだろう? 若者を除いておばさんおじさんおじいちゃんおばあちゃんたちの娯楽はこうした「うた」のVCDを見ることだ。
語呂合わせや韻、声調の抑揚、旋律の流れ、そうした音が耳に入ってきて魂にまとわりついて離さないのだろうか。うたなら普段しゃべらないような内容でも美しい言葉を並べて相手に伝えることができる。あくまでも言葉があってのうただ。

普段なら朝寝坊で食わず嫌いのおじさんも日本では早起きして日本の文化や生活を眼にするのが楽しかったようだ。おじさんは見学したところどころでビデオをとるので毎日民族衣装をきて町を歩く。

自動販売機、自動扉やエスカレータ、自動改札機、モノレール、マッサージ機、電車、海、水族館、船、道路、工事現場においてある人の姿をして警告灯を振る人形、着物を着た女性、大きなお寺、金閣寺、大阪城の城壁の石、刺身やら生もの、物価の高さ、静寂、交通マナー、日本の礼儀、受付のお姉さんたちの言葉遣い、日本の家屋、など、どれもこれも新鮮だったようだ。

二人は心地よく美しい歌声で素直に感想をうたにする。
いいうたができると、その場で忘れないようにノートに書き留めていた。きっとまたいつか別の機会に村でも歌うのだろう。

この経験を、村に住み遠く離れた土地を知らない人々に、私たちの歌声で伝えましょう。私たちの記憶は、村に住み生活するすべての人々の記憶になるでしょう。このことをいつまでも忘れないように、私たちの小さな歌声でうたい継いでいきましょう。……

母は最近一言僕に言った。
タイ族の素晴らしい文化はたくさんある。ようやく今になってその素晴らしい文化を見つけ出したり、気づいたりしているのに、実はもうすでに消えてなくなろうとしている…。

つづく

コメント

 お母さんの
  ことば
  
  すごい しみるね。  

  即興で
  思いを言葉にのせて
  口から出す
  
  っていうのは

   その場の
   空気も香りもとじこめて
   しまうタイムマシーンの
   ようだね。

   なんだか、なかなか
   素直に思いを
   ぱっと言葉にできない

   ものにとっては 
   うらやましい。
   
   村の風景や
   生活事情がかわっていっても
  
   語り継がれていって
   ほしいです。
 
 
2008/06/05(木) 10:04 | URL | #-[ 編集]
 見たもの、聞いたもの、そのときの思いを、そのまま歌でとどめておくことができるなんて、すてきですね。文化とは、そういう形で、人々が自らのものにしていたはずだったのに、いつのまにか、受容するだけのものになってしまったているのですね。
 今日はBSで、ベトナムの花モン族の見合い祭りの様子をしていました。歌を掛け合う風習もずいぶんなくなっているけれど、まだ、歌いかけられたらそれに返せる若者たちがふとうらやましいと思いました。
 
 
2008/06/08(日) 21:22 | URL | manami #-[ 編集]
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