中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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元旦

あけましておめでとうございます。

中国のこのタイ族の地域で長期に暮らして1年以上がたつ。
最後の元旦です。

僕の心の中では、これが最後の元旦だと感じている。

ちなみに、いまの建前では「私」は研究者の卵である。
日常の行為からは研究者とはかけ離れたような日常を送っているのだけれど、その本分は常に忘れることはなかった。

昨晩はカチンの父と二人で食事をした。おとといの酒がたたって父は酔っ払ったまま。ちなみにカチンの父は酒を飲むと人が変わり、一週間酔ったまま。アルコールがうまく消化されないらしい。

普段の父はとても優しく、知識人である。
でも酒を飲み、酔っ払うと人が変わって母を罵る。
母だけではない。いやな思い出のある人を一人ずつ思い出しては罵る。

夜中にふと眼が覚めて罵り始めることもしばしば。
そんなときは「もうねようよ」といって諭すのだった。

昨晩も同じように酔っ払う。今日この元旦も酔いがさめず、母と僕、姉のランと別の地域から来ている母の弟子のフーカムと酒を飲み、酔いつぶす。
酔いつぶれないと、胃が痛くならない。意が痛くならないと酒をやめない。だから飲ませる。

父は饒舌である。過去の記憶をたくさん持っている。
なんでも酒癖の悪化は文革に原因がある。
カチン族ではじめての大学生だった。北京の民族大学で学んだ。

プックジャー(鬼)の系譜のサルウィン川(コン川)をつかさどっていた孔(コン)家の人。山の生活の記憶は細部まで生き生きしている。
カチンの貴族?の家だった。解放頃になると親族はビルマに逃げた。幼少にすでに父親を亡くしていた。

徳宏が解放される前後、近くのタイ族の村と漢族の村で使用人として子供時代を過ごした。なんでも親の言いつけで言葉と生活の知恵を学んだという。そして、10歳くらいの鼻垂れ小僧だった父は友人たちと芒市の小学校に行くことを決意した。靴や服が支給されるときいたのだ。出発の前夜、父たちは学校にいくことを親には内緒で父の家に泊まった。漢族の地域に行ってしまうことは別れを意味していたという。
父たちは囲炉裏の周りでみんなで寝た。

朝になると、少年たちは起きだし、出発の準備をする。一人寝ぼすけがいて、父は彼のズボンを床(高床式の竹の家だった)に結びつけ、彼がおきるとズボンがずり落ちるように仕掛け、みんなで笑ったという。

山の村から芒市までは冒険だった。ニ泊三日の旅。近くの低地の村につくと空腹で持ち金を使い果たした。寝床に困っていたところを、たまたま解放軍と同行していた教師に拾われて途中から車で芒市の小学校に行った。それから1年ほど、家族とは音信普通だった。一年後、母親が心配して探しに来たという。

物語は長い。その細部を覚えている。そして、北京の大学時代に大躍進を過ごし、卒業したとき中国各地を一人で旅行して回った。

偉大な父に見えた。でも母は言う。父が偉大であったのは結婚しはじめた最初の5年だけで、その後は酒のせいで苦労したと。

その酒癖は今も直らない。

姉のランは10年以上前の失恋を機に一時期狂ってしまった。かつてはとても美しい人だった。いまは太ってしまいその面影もない。つい最近まで狂っていた。自我意識のある我侭な狂気だった。この1ヶ月正常になった。両親がいずれ死んでしまうことを確信して日常を取り戻したのだ。

もうひとり姉がいる。深センで不動産会社をやりくりするすごい人だ。父の酒癖のために押さないときから一人でお金を稼いだ。母に似てせっかちだけれど、とても美しい人だ。

もうひとり、次男坊がいた。彼は覚せい剤で命を落とした。

僕のタイ族の母はつらい生活を送っていたのだけど、それは誰もが同じだと、苦しくても家族を捨てなかった。

そして今日がある。僕を気遣って朝から一緒にマーケットで食糧を買い、ご馳走を作った。マーケットでは僕が学びたい機織や、竹細工の情報をあつめてくれた。
家ではみなで酒を飲んで、姉のランは飲まないが、幸せなひと時をすごした。

でも、今僕はこうしてインターネットに向かい、最後の三ヶ月を研究者の卵として調査を行う決心をしている。目的がなければ出会うことがなかったここの人々に、僕は本当にすべきことをまずおいて置いて、目の前の壁を乗り越える決心をする。
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