中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
9月16日…

あっという間にこの日を迎えてしまいました。

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 哏全 葫芦丝大师 (エンダーチュエン先生)
 云南省宏州梁河县勐养镇
 
先生は不思議と人をひきつける人でした。きっと先生の気取らず、人懐っこい笑顔、そして根っからのいい加減な性格が魅力だったのかもしれません。




先生がこんなに有名になるとは思いませんでした。
40代後半から先生は世界のあちこちを旅することができた。
国や民族に関係なく、多くの人々が優しく力強い笛の音に魅了されました。

11年以上前、先生は起死回生をかけて昆明に再上京し、刀一本で楽器を作り続けた。

人は欲に弱い。

どんなに優しくおもえた人でも突然心変わりする人たちがたくさんいた。
最初から騙すつもりでやってくる人間をも先生は受け入れていた。

すこし先生に収入が出てきたあの頃が一番楽しかった。
先生は1年たつと引越しをして、毎日家で手料理を振舞って友人たちと酒を飲み交わし、語り、ゆったりと時間を過ごしていた。

そしてその頃に出会う人々との交流から、先生の運命の輪が自分ではコントロールできないくらい速くまわり始める。
いろんな人がやってきて先生とビジネスの話をする。
レコーディングもあちこちか呼ばれて行われた。

でも結局きちんと出版されたものは少ない。

昆明にきてからも2度財産全部騙されるような事件もあった。
それでも刀一つで楽器を作り続けた。
それでも人付き合いの仕方も変わらなかった。
いい加減さも変わらず、人助けや変な借金も増えた。


最後の2年、先生は都会は疲れる、そう僕に漏らしていた。
田舎の家も新しく建てたし、数年したら田舎でゆっくり作曲し楽器を作って生活したいといっていた。

そう、もう最後の2年は酒も控えたし、健康に気をつけて少しは痩せたが疲労はたまる一方だったようだ。熱心な弟子も各地に増えて多忙を極める。いつもいつも接待だ。

ちょうど亡くなる1年前のある日、先生はすべての予定をキャンセルして、(本当はそれも誰にも言わず)1週間ほど姿をくらましたことがあったと言う。

いろんな人たちが八方を探したとか。
そして先生はけろっと帰ってきた。


一周忌を迎えて、僕には先生のあの言葉が真実かどうか分からなくなった。

もし、生きていたら、将来果たして先生は無事に田舎に戻れただろうか。

たぶん、この人は戻ろうと決めて戻らなかったと思う。
状況が悪くなったり、どうしようもなくなったとき、何もかも嫌なときに田舎に帰ったかもしれない。
逃げたかもしれない。

でもこの先生ならきっと無責任に逃げ出してしまうことはありえるとおもった。

人は欲に弱い。
先生の周りには心のどこかに欲を持った人が多く集まった。

先生が金持ちとでも思ったのだろうか、この人がスターになって金を稼ぐとでも思ったのだろうか、
この人の人脈でビジネスができるとおもったのだろうか。

そこらへんの廊下で昼寝したり、服も何年も着続けたよれよれの数着しかないこの人を金のなる木と思ったのだろうか。
みんなこの先生の人柄と美しい笛の音に惹かれて楽しい時間を過ごすことができた。
ただ、人によってはついつい欲を出してしまったのだ。

先生は我慢できなくなるまで、どんな人も受け入れた。自業自得だった。

だからこの死も、先生にとってはまた突然どっかにいった、そんな感じだと思う。
よく幼馴染の、もう何年も先生と話しをしていない村人たちも同じことをいっていた。


ただ、僕は今の現状に目を向けることができない。

結局、先生は故郷に戻ることができず、昆明に埋められた。今日、立派な墓のお披露目があるだろう。

後期に増えた全国各地のたくさんの弟子たち。友人。
その一部の人々がいまも欲を出している。

親族も巻き込んで。
先生の娘2人はあまりにも世間をしらなすぎた。でも今現実に立ち向かおうとしている。
僕は人の欲にはかなわないと思うから、先生のように上手くその恐ろしい欲の渦から逃げ出して欲しいと願う。
そして村でひっそりと暮らす二人の老人を大切にしてほしい。

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あなたに安らかな眠りがおとずれますように。

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