中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
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雲南省に旅行に行ったことがある人なら知っていると思う。よくタイ族レストランに行くとメニューに載っているヤツだ。その名のとおり、竹筒を使ってご飯を炊いているもの。竹の内側のみずみずしい匂い、それに火にあぶられて焦げた独特の竹の表面の匂いが香ばしく、口に入れて飲み込むまでご飯の甘味が口の中に広がって食が進む。

僕はこれを村の友人たちと夜の川辺で語り合いながら食べた思い出がある。
僕らが大学生だった頃、もう10年も前になる。僕はある夏休みをひょうたん笛の先生の田舎で過ごした。ちょうど先生の工房で知り合った昆明の大学に来ていたタイ族の友人の村に行ったのだった。

夜中、木々が風に揺れてざわめく音を聞くと思い出してしまう。
日本では体験できなかった自然との共生の知恵。今振り返ると田舎での生活は驚きと発見の連続だったと思う。ただ、それに慣れてしまって僕は感性が麻痺して素直に受け止めなくなる。

夜空も広く、たくさんの星が広がっている。「宝石をちりばめた」なんて小説で見られる表現にぴったりの星空がそこにはいつもあった。

僕が中国にいて、いやアジアにいて最も好きだったのは「外」で食事することだ。街の道端であろうと、そこに椅子とテーブルをおいてご飯を食べる。店先でも、入り口はドアじゃなくて、まだ柱と天井だけで工事中の建物みたいにそのまま外と内に開かれた入り口。開放的な入り口のおかげで天井の下は店なのかどこなのか区別かつかない。

中国の人たちはよく道端に座っていた。道端で将棋をさしていたり、新聞を読んでいたり、日向ぼっこしてお茶を飲んでいたり、ラジオを聴いていたり、毛糸で何かを編んでいたり、子供をあやしていたり、道端は生活の場だった。日本の新興住宅地や町を歩いていると、すっかり生活の匂いがなくて寂しい。縁側もなくなってしまった。

村での食事も、いつも外と内に開かれた空間での食事だった。確かに家の中だ。でも外と内を区別する壁は少ない。家という空間をつくる塀が壁の役割をしているくらいで、あとの空間は閉じられていない。部屋という概念も僕らの日本のそれとはまったく違う。隙間やあそびの空間、余裕の空間、無駄な空間がたくさんだ。特に物も何もない。インテリアとか、デコレーションとかそういうのはあまりない。

でもテーブルは程よく小さく、低い。大勢で食事をするときはみな身を寄せ合う。20センチ強の高さの椅子に座り、アジア人には適度な姿勢を保てる。疲れたら肘を膝に乗せて前かがみになったり、方膝を両手で抱えて後ろに重心をたおしてすわったり、とにかく夕食は特に長時間座ってゆっくり食べる。

食材はあちこちにある。
道端に生えている草も食べ物になる。
川に行けば魚が取れる。
田んぼに行けばタニシや蛇やドジョウもとれる。
畑に行けば野菜がなっている、

僕らは夜、刀一本と酒と適当な食べ物を見繕って川辺に出かける。

月と星明りに照らされた道をふざけながら、語りながら、すすむ。

流木や枯れ草を集めて焚き火する。川沿いの竹やぶから適当な竹を僕ら数人の暇つぶしのご飯のために切り倒してくる。

僕らがつかったのは1年目くらいの新しい竹。まだ細めだけど、そこに米と川の水を入れ、焚き火のなかに斜めにして立ててご飯を炊く。

みんな火の扱いには慣れたものだ。轟々と火をたく。
ごうごうと。ごうごうと。
青黒い夜の視界のなかに赤と黄色の揺れる炎が輝いて美しい。

肉やら魚をあぶり焼きしておかずも作る。
大学生の友人たち、村の友人たち、僕らはみな同じ年齢くらいだったから、それなりの悩みや将来への期待を抱きながら、焚き火に燃える火のように心の中は熱いものでいっぱいだった。

みなで酒を飲み、香ばしい竹筒ご飯を食べる。
焼けた竹筒をやけどしないように気をつけてとりだして、とりだして、
竹に刀を軽く入れ、裂いてみる。竹の内側の膜がご飯を包んでいる。
ああ、湯気で目をとじてしまうのだけど、その香りはなんともいえない。
みんなの身体に灰の匂い、手の汚れ、酒の臭いが染み付く。

あれから10年。ほとんどの友人が家庭を築き、それぞれの生活を生きている。
それでも村に開かれた空間がある限り、もうあのときのように川辺でふざけあったりしないけど、笑い声とおいしいご飯の時間は変わっていない。
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