中国雲南、タイ、ラオス、ビルマの人、生活、そして音楽。 ひょうたん笛(葫芦絲)演奏者が綴る「おと」、「ことば」  
ワン母はある日僕に言った。

「来年はとても遠い、しかし来世は遠くない」

と。

母はなにかを暗示していたのだろうか。

数日後、僕は昆明の友人、楊昆の死を知らされた。
僕は中国に来る前から、いやな予感があった。仲間からの連絡がちょっと今までとは感じが違った。
誰かに何かあったのかもしれない。僕は昆明に到着してもすぐに村のほうに移動し、あえて連絡をとらなかった。


ある昼、僕は1週間続く不眠と発熱のダブルパンチを喰らって朦朧としながら携帯電話を取った。
昆明の親友ホーユェンからだった。

彼は楊昆の病状を僕に知らせてくれた。彼は白血病の末期だった。
北京の医者もさじを投げた。彼は昨日昆明に戻ったが、体調が悪いという。ホーユェンは僕にまず風邪を治して彼に会ってやれ、といった。

yangkun 2003 01
2003年 この日も皆で食事をし、彼の部屋で映画を見た。

楊昆たち、彼らと出会って10年になる。
彼らを見ていて、僕はとても羨ましかった。僕もその輪のなかに少しでも一緒にいられたのは、この生涯のなかでも忘れられない宝物だとおもう。
何もないところから、彼らはユンフェストYUNFESTというドキュメンタリー映画祭を発起した。様々な困難を乗り越えながら今までやってきた。中心メンバーは喧嘩しながら、文句をたれながら、数ヶ月話さないこともあれば、解けた氷のようにすぐ仲を戻したり、夜遅くまで芸術をかたりあう仲間たちだった。

おととしの映画祭、楊昆がオーストラリアに留学のためいなかった。仲間たちはなんとか乗り越えた。でも彼の存在は、どれだけ映画祭の運営を潤滑に、滞りなく行なっていくために必要なのか、皆身をもって理解した。
いろんな失敗もあった。
僕らは今、その失敗を振り返って、皆が子供のように自由すぎて、それなのにお互いに遠慮しすぎていたことに気づいた。映画祭がおわってから僕はよく楊昆とメッセンジャーで開幕式と閉幕式を次は絶対に成功させようと話していた。2005年は政府との関係でアジアの音楽家たちを招き損ねていた。それも実現させたかった。
2007年の閉幕式はリハーサルをしなかった。だから散々たる失敗だった。閉幕式こそ全員にとって最も大切な素敵な美しい記憶になる出来事だったはずだ。それなのに、必ず失敗することに僕は気づいていたが、他の仲間に遠慮して主張できなかった。
僕は楊昆がいたら、きっと彼が仲介していろんなことを円滑にすすめてくれただろうと、話した。


ホーユェンはずっと昔から冗談を僕に言う。

「僕たち仲間はこんな風にしょっちゅう喧嘩しては仲直りしたり、ずっと子供のように喧嘩を繰り返している。この先どんなに年老いても、きっと僕たちは今と同じようにお茶をすすりながら文句をたれて喧嘩しているだろうな。」

僕がイメージする未来の年老いた仲間たちから、一人、楊昆の姿は消えてしまった。

ホーユェンから電話があってすぐ、楊昆は帰らぬ人となった。


昆明で再会したホーユェンは僕に言った。

「楊昆が北京に1ヶ月ほど入院したとき、北京の仲間たちと僕やイースチャンが病院の近くに部屋を借り、交代で食事をとどけた。まだ冗談も言い合えた。でも、医者が彼は治らないと僕たちに告げてから昆明に戻るまで、まだ元気で冗談を言う楊昆を見ているのが一番つらくて、ずっと泣き続けたよ。だから臨終のとき、僕は涙が出なかった。あんな大勢に来るべき瞬間まで苦しむ姿を見守られて、楊昆はもしかしたら怖かったろう、つらかったろう、そう心が痛んだんだ。」

遠い北京でも多くの仲間に支えられた、楊昆はここで素晴らしい親友たちにめぐり会えた。

僕はワン母が言った言葉を思い出し、噛み締める。
「来年はとても遠い、しかし来世は遠くない」


僕は思った。
もしかしたら、明日、もしかしたら明後日、もしかしたらいつか、僕らはどこかですれ違うのだろうと。

村のシャーマンが死者の魂を送る即興歌のなかでいつも歌い、家族のために懇願する。
「偉大な異界の霊母よ、お願いします。死者に来世は禍や不幸がないよう、長寿でありますように!」

楊昆は僕らより早く来世へ向かった。
きっと会って語り合うことはできないけれど、

もしかしたら
僕らと道ですれ違う誰かと、きっと新しい仲間たちと、次は老いて白髪になるまで、
大好きなお茶をすすって仲間のために喧嘩するだろう、笑うだろう、泣くだろう。

さようなら。



yangkun 2007 02
2007年 YUNFESTオフィスにて


リンク: 
于坚(詩人)「悼念杨昆」(中国語)
http://blog.sina.com.cn/s/blog_4889207c0100hbmo.html
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